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すっかり観る将になってしまった、元指す将の将棋観戦記録です

山崎隆之八段が昇級した

山崎隆之八段 昇級おめでとう!

山崎隆之八段
山崎隆之八段

もう既に多くの人が知っている通り、山崎隆之八段がこの度A級に昇級した。 苦節23年。念願の最高峰だ。

山崎隆之八段、おめでとうございます。

news.yahoo.co.jp

詳細は、上記の記事を読んでいただくならば、山ちゃんの苦労を感じ取ることが出来る。

オープニング
オープニング

ちなみに、今回の出だしはこんな盤面だった。 初手9六歩から7八銀というほとんどのプロが指さないような将棋を指すのは山ちゃんと佐藤康光会長くらいしかいない。 独創的な将棋を指し続けてその上勝っている人はプロ中にも中々いない。

例えば、羽生善治渡辺明藤井聡太といった超トッププロは、こういう変な形の将棋は指さない。 せいぜい羽生さんが若い頃に初手6二銀という手を指したくらいで、彼らは基本に忠実、かつ自然な形を採用している。 自らものすごく変な形に持っていく事はそうそうない。

しかし、山ちゃんは平然と変な形に持っていく事がある。それでいて、棋戦優勝8回、タイトル挑戦1回という記録を残しているのは別格。 将棋の華やかさも相まって、唯一無二の棋士であり、ファンが多いのも当然と言える。

山ちゃんの昇級が決まったので、来期のA級は以下の人たちで戦うことになる

渡辺明名人は、現在名人だが奪取された時、A級に舞い戻ってくる。 直近の王将戦では、永瀬二冠をサンドバッグにしているような将棋を指していて、とても充実している事が分かる。 いわゆる四強の中でも安定した強さを発揮している。 B1に1回落ちた後、全勝して即A級に戻り、名人を奪取したのは流石である。 中学生棋士というのは、別格の存在なんだと改めて感じさせてくれる。

斎藤慎太郎八段は、A級1年生にて名人初挑戦が見えている。 かつては王座を獲ったこともあり、若手の中でも頭一つ抜けている。 詰将棋にも強く、その終盤力の確かさが安定した強さにつながっているに違いない。

広瀬章人八段は、かつて王位と竜王を獲ったことがある強豪である。 色々な棋戦でも予選を勝ち抜いており、その強さは折り紙つき。 終盤でのせめぎあいでは、正確さと粘り強さの両方を兼ね揃えているので、一筋縄では倒せない強さを持っている。 最終戦に勝てば名人挑戦が見えているので、2/26の対局は目が離せない。

豊島将之二冠は、四強の一人。最近はかなり緻密な序盤戦術で星を荒稼ぎしている。 見たことがない領域に相手を引きずり込み、その上で勝つという戦いを良くしている。 序盤、中盤、終盤隙がないという言葉が広まっているように、どの局面でも安定した強さを発揮している。 今期の順位戦は、佐藤康光九段に負けなければ名人挑戦の目があっただけに、本当に惜しい。 最終戦は広瀬八段なので、結果が楽しみである。

佐藤康光九段は会長職をしながら謎の強さを発揮する別の形の天才である。 天衣無縫と言われるその差し回しは緻密且つ自由。悪形と言われる形を深く読み込んだ上で厭わない棋風は別次元。 来期の対山崎戦は将棋ファンの皆が楽しみにしているに違いない。 自由(計算)vs自由(天然)のどちらに軍配が上がるのか。 恐らく、二人共普通の将棋を指す気はさらさら無いと思うので、早く二人の対戦を見てみたい。

佐藤天彦九段は名人経験三年という実績を持つ強豪。しかし、名人以外のタイトル戦以外での活躍が少ない。 将棋倶楽部24で鍛えまくった将棋+プロになってから身につけた独特の受けの感覚が順位戦にマッチしていると思われる。 たまに順位戦特化型棋士がいるのだが、佐藤天彦九段はまさにその典型。 横歩や矢倉を得意とし、対羽生善治にて勝ち越している稀有な棋士の一人。 先日の順位戦でもきっちり勝っていたので、純粋に相性が良いのだと思う。

糸谷哲郎八段は、山ちゃんと同門で、弟弟子。 お互いに手の内は知り尽くしているに違いない。二人が、幼い時を経てついに大舞台で勝負する日が来た。 師匠の森信雄先生も嬉しいに違いない。森門下のトップ3はA級になった。 村山、山崎、糸谷。次に続くのは千田翔太七段か。 森門下の躍進はまだまだ続く。

菅井竜也八段も、タイトル経験ありの強豪。振り飛車党の希望の星であり、現在も孤軍奮闘している。 佐藤天彦九段と同じく将棋倶楽部24で鍛えた確かな地力の持ち主。 A級順位戦ではあまり目立った成績を残せていないが、まだ1年目。ここからまた記録を作ってくれるに違いない。

羽生善治九段については多くを語る必要は無いだろう。 タイトル99期獲得の現将棋界における最高の記録保持者だ。 一昨年から昨年に掛けて、現代将棋と羽生九段の棋風がマッチせず苦労してたが、ここに来て少しずつだが復調の兆しを見せている。 負ける時はあっさり負けてしまうが、勝つ時は華やかに勝つ羽生将棋は健在。 バランス重視の形になり、読む範囲が広くなっている終盤戦で悩むシーンが増えているが、だんだんとそのコツを掴みつつある。 爆発力は抜群の棋士なので、来期が楽しみである。

そして、永瀬二冠と木村九段が残りの昇級枠一つを狙う形になっている。 順位戦3連敗した後、近藤七段に1敗し、まさか昇級争いに留まるとは誰も予想しなかった。 次戦永瀬負け-木村勝ちの場合、8-4になり、永瀬二冠を頭ハネ出来る。 永瀬二冠は、今期の昇級枠の筆頭だったが、松尾-丸山-山崎に手痛い3敗を喫してしまった。 B1の番人と言われていた二人に負けてるあたりが永瀬二冠らしいといえば、らしい。 王将戦でも渡辺名人にボコられているし、少し疲れが出てきているのかもしれない。 次戦の近藤七段戦は、勝てば昇級負ければアシストの可能性を残しているので、タイトル戦以上に力を入れてくるに違いない。

一方の木村九段の対戦相手は深浦九段。深浦九段はここで勝てば4勝9敗になり、順位の関係で降級をギリギリ免れるかもしれない位置にいる。 まあ、阿久津八段が負けること前提なので、それはそれでどうだという感じだが、木村九段も深浦九段も負けられない戦いなのは間違いない。 いずれにせよ、木村九段も永瀬二冠も勝ったほうが昇級するというシンプルな勝負になっている。

最後の1枠がどうなるか、見ものである。

山崎隆之八段の昇級が決まって本当に嬉しい。 A級順位戦での活躍が楽しみである。