観る将さんは語りたい

すっかり観る将になってしまった、元指す将の将棋観戦記録です

第 82 期順位戦予想

第 82 期順位戦予想

やや時期は早いが、82期順位戦の予想を書いていこうと思う。

A級

A級順位戦は混戦状態が続いている。挑戦者争いは4人に絞られた。

現状、豊島九段が1敗でリードしているが、実力伯仲なので、先が読めない状況だ。 最終戦の菅井八段との直接対決前に決めておきたいが、その菅井八段は2敗で背中をぴたりとマークしているので、そう簡単には振り切れないだろう。 最も、現在王将戦藤井聡太八冠に連敗してしまったので、精神的なダメージはかなり溜まっていると思う。 次戦の佐藤天彦戦は、注目だ。

そして、その菅井八段に先日土をつけた渡辺明九段も挑戦候補に名前が上がってきた。 早々と黒星を重ねたので、今年は駄目かなと思いきや、きっちりと勝ち星を稼いでいくのが渡辺九段らしい。 手堅い終盤力に加え、精緻な序中盤という新たな武器を身に着けて、隙が無くなっている。 最も、他の棋士もそのスタイルを身につけているので、将棋界全体として、似た将棋が増えているのが、ちょっとだけ残念である。

その渡辺明九段のすぐ後ろには永瀬九段。 先日まで成績でリードしていたが、稲葉九段に負けたことにより、4位に後退。 挑戦チャンスは限りなく低くなってしまったが、チャンスゼロでは無いので、その可能性のために永瀬九段は全力を尽くすだろう。

一方、降級候補に関してだが、これも混沌を極めている。

この二人が5敗しているという事実に、びっくりしている。 もっとも、その上も

も4敗なので、どれだけ混戦模様であるかが容易に理解出来ると思う。 次戦の広瀬-稲葉戦は、負けたほうが降級決定or降級候補になるので、非常に興味深い勝負になるに違いない。 天彦九段も順位が悪いため、1敗すると途端に降級候補になるのが厳しい。 勇気八段、中村八段も順位が悪いため、1敗が重くのしかかる位置にいる。

今期のA級の台風の目は中村太地八段であり、全敗すると揶揄されていたが、蓋を開けてみると3勝4敗と善戦しており、特に斎藤慎太郎八段に黒星を付けたのは大きい。 残りは渡辺九段、永瀬九段の二戦なので、レーティング的に勝つのが難しい相手であるが、何かしてくれそうな雰囲気を漂わせているのは凄い。

いずれにせよ、誰が落ちて、誰が挑戦するのか読めない接戦になっている。 今期のA級順位戦は過去最高レベルで実力が拮抗していると言える。

自分の予想としては、豊島九段が挑戦&名人奪取、降級は稲葉八段斎藤八段と予想する。

豊島九段が名人挑戦になれば、藤井聡太八冠との壮絶な死闘が見れるだろう。

B級1組

B級1組は増田康宏七段と千田翔太七段が昇級候補として一歩リードしている状況だ。 増田七段は対大橋七段戦に勝っていたら昇級確定だっただけに、ここを落としてしまったのはもったいない。 とはいえ、最終戦を勝てば文句なしの昇級なので、3/7の屋敷戦で勝って昇級を決めて欲しいと思う。

千田翔太七段はあと2勝積み上げなければいけないので相当に厳しい。 1敗すると、頭ハネを食らう可能性があるので、なんとか勝ち星を積み上げたい。 次戦の屋敷戦は鬼勝負になると思う。

二人の後ろを追うのは糸谷八段と大橋七段。 大橋七段は、C級2組時代が長かったが、一旦上がったらトントン拍子に昇級してあっという間にB級1組に来てしまった。 流石に、1期抜けは出来ないかと思いきや、いい位置にまで上がってきた。 やはり、実力がある棋士だなと感じられる。

糸谷八段は、即出戻りの可能性があるのが大きい。 残り2勝を積み重ねる事が出来たならば、チャンスはある。 もっとも、羽生九段、佐藤康光九段と連続レジェンド対決なので、簡単では無いだろう。

一方降級に関しては、横山七段と木村九段が決まっており、最後の1枠を6敗の三浦九段と5敗勢が争っている。 順位的に怪しいのは屋敷九段、山崎八段か。

という事で、昇級候補には増田七段千田七段を挙げておく。 降級候補には関しては、横山七段、木村九段に加えて三浦九段と書いておく。 三浦九段と屋敷九段のどちらが残れるかというと、恐らく屋敷九段の方が踏ん張る気がしている。 三浦九段は、残りの対戦相手が山崎八段と羽生九段であり、今の羽生九段に白星をあげるのは相当に難しい。 それほど、羽生九段は充実している。順位戦では連敗しているが、内容は悪くなかったので、最終二戦は連勝して終わる、そんな雰囲気を感じ取っている。

B級2組

B級2組も混戦模様だが、大石七段深浦九段が1敗でややリード。 以下、高見七段、石井六段、青嶋六段が続いている。

大石七段は地味強棋士の代表と言っていいほど地味に強い。最終戦が、藤井猛九段と郷田九段という羽生世代との連戦なので、簡単には昇級出来ないと思う。藤井猛九段から白星を上げる可能性がやや高いが、郷田九段は厳しいだろう。 ただ、順位的に有利なので、1勝1敗ならば昇級チャンスありと言える。

深浦九段は連敗しない限り昇級出来ると思う。残りは丸山九段と佐々木慎七段なので、十分に勝ち星を見込むことが出来る。

残りの1枠に冠しては、順位的に高見七段が有利。 よほどの事がない限りここは確定だと思って良い。 高見七段も佐々木慎七段との対戦があるので、二人の戦いは見ものだ。 2/14の高見-佐々木慎戦は非常に興味深い戦いになると思う。

一方の降級に関してだが、降級点2が付きそうなのが、阿部九段、飯島八段、畠山鎮八段、中村九段、井上九段あたりが怪しい。 いわゆるちょっと前の中堅どころの棋士が降級するのは見ていて悲しいが、こうして新陳代謝が進むのが将棋界の良いところ。 今期のB級2組は大量降級もありうるカオスな状況になっている。

最も、結局誰がどれだけ負けるか次第なので、首の皮一枚で繋がるというのはよくある話なので、最後まで気が抜けない。

C級1組

C級1組は服部六段が頭一つリードしていて、続けて古賀五段が1敗で追いかけている。 そして、序盤で連敗していて今期は無理かと思われた伊藤匠七段が2敗勢のトップとして追いついてきた。

昇級に関しては伊藤匠七段が負けない限り、この三人でフィニッシュだと予想する。 残りの2敗勢は伊藤匠七段に頭ハネされる可能性が非常に高い。 昨年、伊藤匠七段は最後の最後で頭ハネを食らってしまったので、今回逆に大量の頭ハネを決める可能性が高いのは、勝負事の残酷さを浮き彫りにしていると言える。 ある意味非常に公平な勝負だと言えよう。

降級候補に関しては、少なく、日浦八段高橋道雄九段が降級しそうだ。 高橋道雄九段は、タイトル経験のある大ベテランであり、かなり耐久力のある残り方だったが、いよいよC2へという感じだ。 降級したとしても、フリークラス宣言せずに、最後の最後まで順位戦を指し続けて欲しいと願っている。

C級2組

佐々木大地七段が3敗目を上げてしまった事で、本命が消失したC級2組。 蓋を開けてみると、冨田四段高田四段藤本四段というフレッシュ(?)な三人が昇級候補に。 特に藤本渚四段は今年度の勝率ランキングで先日まで一位だっただけに、期待は大きい。なお、藤井聡太八冠が勝率ランキングトップに躍り出た模様。2024年1月27日現在、0.864というあの誰も越えられなかった中原名人の記録を大幅に塗り替える記録が出そうでヤバい。というか、ほとんどがタイトル戦のみでこの高勝率を叩き出しているのが偉業であり、異次元すぎてどこから突っ込めばいいか分からない。謎すぎる。

閑話休題

いずれにせよ、上記の3人を昇級候補として挙げておきたい。 降級に関しては、青野九段竹内五段長沼八段が候補に挙がっている。竹内五段はまだまだ若いので、もう少し踏ん張って欲しい気持ちもあるが、果たして……。

青野九段は、僕が将棋を見始めた時はA級でバリバリ活躍していた棋士なだけに、ついにこの時が来たかという気持ちでいっぱいだ。 最後まで順位戦を戦ってくれてありがとうございます。

また降級候補では無いが、瀬川六段は今の順位のままだと降級点2になるので、来季以降が危なくなる。 アマチュアからプロになるという道を切り開いた先駆者だけに、踏ん張って欲しい所。

総括

今期は、本当に誰が本命なのか全く読めない順位戦になっている。 ようやくちらほらと昇級/降級の候補が見えるようになり、この記事を書いているが来月の勝負が終わるまで、結論が出せない状況になっている。 藤井聡太八冠というとんでもないスターが順位戦を荒らした後に残っていたのは、大戦国時代という混乱だった。 それだけ、棋士たちの多くが実力伯仲になったというのが興味深い。 若手も中堅もベテラン勢も誰もが切磋琢磨する、将棋界はこれからが面白い、いや、現在進行系で一番おもしろい時期だと言える。