観る将さんは語りたい

すっかり観る将になってしまった、元指す将の将棋観戦記録です

本命不在の第 82 期順位戦

本命不在の第 82 期順位戦

2023 年も残す所数日。 ぼちぼち順位戦の結果が出てきたので、その記録を綴っていきたいと思う。

A 級

傷ひとつなしでトップを駆け抜けているのは、豊島九段。それを 1 敗で追うのが菅井八段。 それ以外は基本的に団子状態。広瀬九段が最下位にいる事に違和感を感じるが、それだけ実力が拮抗しているのだろう。 誰がどれだけ勝って、どれだけ負けるかまだまだ何も見えない。 それくらい、順位予想が難しくなっている。

B 級 1 組

こちらは、増田七段が 1 敗でトップをひた走っている。負ける余裕が 1 個あるのは大分気楽ではあるが、それで緩むといきなり転落もあり得るので、最後まで気は抜けない。 野球で言う所のマジック 2 状態なので、ぜひとも、残りの二戦には勝ち抜いて欲しい。 最も、澤田七段と大橋七段に連勝というのは、相当に厳しいものだとは思うが。

上位勢の千田七段、糸谷八段、羽生九段、大橋七段に昇級の目がある。順位の関係上糸谷八段がやや有利か。今日の順位戦の結果次第で、この辺が変わると思う。

木村九段、横山七段は降級黄色信号が点っている。 ただ、二人共実力者なので、ここから巻き返す可能性は十二分にある。

B 級 2 組

B 級 2 組も混戦模様。 開幕五連勝していた戸部七段が二連敗して順位が目まぐるしく変わった。 現在トップは大石七段、深浦九段の一敗勢の二人。その後ろに、高見七段、戸部七段、谷川九段、石井六段、青嶋六段と続く。 誰が本命なのか全く分からず、昇級候補を絞ることが出来ない。 期待値的には、若手の高見七段、石井六段、青嶋六段あたりには上がって欲しい。しかし、ベテラン勢の強さは色褪せていないので、誰が昇級してもおかしくないと思う。

降級候補に関しては、下位勢に降級点持ちが固まっているので、今期は大量降級があるかもしれない。

C 級 1 組

傷なしなのは服部七段だけ。あとは団子状態。 上位勢の直接対決はほぼないため、順当に行けば、服部七段と 1 敗勢の斎藤明日斗五段と古賀五段が昇級となる。 斎藤-西田戦で西田五段が勝つと、順位の関係で斎藤五段の昇級の目が怪しくなる。 来年の 2/6 は C 級 1 組での鬼勝負になるかもしれない。

C 級 2 組

富田四段が負け、全勝が消え混戦状態に。現状は 1 敗勢が有利なものの実力が拮抗している今の状況では、上位陣でも崩れる可能性は十分に高い。 C 級 2 組も誰が上がるのか全く予想がつかない。 来年の 2 月になるまでは、結論を出せない状況が続きそうだ。

総括

本命として誰が上がるのか全く分からない状況になっている。 こんなにも混戦状態になった順位戦は始めてなのかもしれない。 藤井八冠の誕生により、順位戦を誰が勝ち抜くかの予想が立てにくくなったのは、意外な結果だと思っている。 AI 研究の導入により、若手もベテランも序中盤での差が開きにくくなり、地力勝負に持ち込めているが星がどうなるか分かりづらくさせているのかもしれない。 当然ながら、奨励会を勝ち抜いてきた棋士たちが弱いはずもなく、ましてや AI 無しでここまで闘ってきた棋士たちなのだから、地力の分厚さは半端ではない。

AI 導入により、将棋界の実力が跳ね上げられているのは間違いない。 第一人者である藤井八冠がそれを示している。 そして、彼を一人にしないために、才能をもった人たちが戦い続けている。 来年になったら、例のごとく昇級予想を書こうと思うのだが、果たして書くことが出来るのだろうか……。