観る将さんは語りたい

すっかり観る将になってしまった、元指す将の将棋観戦記録です

第69期王座戦第1局感想

第69期王座戦第一局

王座戦の第一局が昨日終わった

午前中から八十手近く進む超ハイペースで進んでいたが、そこからはじっくりとした戦いになった。 盤面そのものは、先手有利で進んでおり、見た目上も先手が押して終わるかなと思っていたのだが、

102手目
第69期王座戦第一局

102手目のここが分岐地点であった。 ここで香を取りに行く▲9五金と永瀬王座は指したのだが、これが大悪手になってしまった。 一見後手の攻めの要を外すので良さそうに見えるのだが、次の△9九角が必殺の一手になってしまった。 ここでは安全地帯に移動する▲7七玉と指していればまだまだ息の長い将棋になっていた。

評価値で言うと、△9九角で-1,000点ほどの大逆転になってしまった。 逆に、△9九角以外では勝てなかったので、チャンスを逃さなかった木村九段を褒めるべきだろう。

▲9五金は、わずか1分で指されており、読みぬけがあったのが類推される。 △9九角はノータイムで指されており、こちらは読み筋通りといった所か。 お互いの経験値の差が出たように思える。

とはいえ、ここで勝負が終わった訳ではなかった。

121手目
第69期王座戦第一局

121手目で、先手は▲6五銀と指したが、ここで▲5一金、△同飛車、▲6五歩となると、勝負はまだ分からなかった。 棋譜コメントでは永瀬逆転と書いてあるが、互角ぐらいにまで戻せたという感じだ。 5六の銀を動かさないのがポイントで、この銀が動くことで自陣の守備が弱まった事が決定打となってしまった。

王座戦感想

久々に、角換わり腰掛銀の対戦を見たが、かなりの手数研究していることが見受けられる。 しかしながら、やはり終盤で人間は間違えるため、優勢になったとしても勝ち切るのは難しい。 今回、永瀬王座は非常に残念であったが、逆転のチャンスがゼロではなかったので、人間対人間の勝負というのは見ていて楽しい。 そして、木村九段の勝負強さを垣間見ることが出来た。 羽生世代と戦い続けたその粘り腰の強さは、棋界随一。今後の王座戦も楽しみである。