観る将さんは語りたい

すっかり観る将になってしまった、元指す将の将棋観戦記録です

かなけんシステム登場

第79期順位戦C級1組1回戦 先崎-古森戦

かなけんシステムは、三間飛車を指す人の間ではかなりメジャーな戦法だ。 アマチュア棋士のかなけんさんが愛用する指し方なのだが、プロの棋戦でかなけんシステムが登場したので、それを紹介する。

棋戦は、第79期順位戦C級1組1回戦。先崎-古森戦で現れた。 手元に棋譜がある方はぜひ並べて欲しい。

  • 26手目 △3五歩 この珍しい歩付きがかなけんシステムの特徴。狙いは、5六の銀をさばくこと。かなけんシステムは、棒銀戦法なのだ。
  • 44手目 △3六歩 先手の工夫で仕掛けられない時どうするかの数手は参考になる。一見先手陣が固くなった瞬間に仕掛けるのは参考になる。6筋が薄くなった瞬間が攻め時という事だろうか。自分の棋力では読みきれない。
  • 71手目 ▲4二角成 お互いに金を取り合う展開だが、飛車角をさばけて堅陣なので、先手のほうが戦いやすそう。評価値は後手の方が500点くらい良いのだが、成銀の有無と龍と馬の効率差という所だろうか。
  • 74手目 △7一金打 後手のほうが囲いが薄いので、ここにしっかり手を入れるのがポイントっぽい。自分だとすぐに攻めたくなってしまうので、勉強になる。
  • 84手目 △1三桂 駒損を避けつつ馬に当てる一石二鳥の手。
  • 91手目 ▲1三馬 不利ながらも急所に馬2枚を効かせる実戦的な手。
  • 103手目 ▲5六香車 ここで、評価値がかなり変わっている。変わって、ここで成銀を食いちぎって、馬を穴熊に引き寄せる手の方がまだ戦えたようだ。
  • 128手目 △7六歩 コンピュータの読みには入っていない手だが、指されてみるとなるほどという手。香車を打った116手目あたりからこの攻めは考慮に入っていたのかもしれない。古森先生恐るべし。
  • 141手目 ▲8四馬 同玉と取ると大逆転。手持ちの金銀2枚と、先手の陣形の相性が出ている。

感想

先手の先崎学九段の受け方は、居飛車党にとって参考になる受け方だったと思う。 28手目の△5一角で、かなけんシステムは発動しているが、不動の▲4九金があるため、そう簡単には3筋突破できないという事を主張している。 アマチュアの受けでは恐らく3筋突破されてしまうのだろうが、プロならばここをしっかり凌ぐことが出来るという読みなのだろう。 穴熊のハッチをしめ、角を6八に配置する事で見事にかなけんシステムの仕掛けを留まらせたのは流石と言える。

2四歩、同歩、3三歩の、とがめ方もうまかった。 これで、先手は後手の飛車角の捌きを止めることが出来たので、やや有利になっていた。

まずかったのが59手目の▲5八飛で、△4七銀成と銀を捌かせてしまったのが勿体ない。 ここはもう少しポイントを稼ぐ必要があった局面で、▲7四歩や▲5四歩を効かせてから、▲3一角から捌きにいった方が良かったようだ。 目標となっている飛車を7筋で活用できていればまた違った結果になったかもしれない。

総評

プロの棋戦で、かなけんシステムを見ることが出来たのは凄いラッキーだと思っている。 ただ、古森先生の勝ち方を見て分かったのは、やっぱり終盤力が強い人じゃないとかなけんシステムは使いこなせないなという事だった。 自分ならば、141手目の毒まんじゅうを食べて頓死してるに違いない。

先崎先生の受け方も非常に素晴らしく、かなけんシステムを相手にする時はぜひこの組み方で対応したいと思った。